2010-03-30(火) [長年日記]
■ 「非実在青少年問題」規制反対派はもうちょっと戦略的に動くべきじゃないか
ゆうべ、東京都の「非実在青少年問題」の討論をBSフジ「プライムニュース」でやるというので、こたつに入ってノートPCでTwitterのハッシュタグ#hijitsuzaiと並行して眺めていた。ちなみにおれは、言うまでもなく反対派である。民主主義国家で、権力に表現の自由を売り渡すことほど愚かしい行為はないからだ。
で、BSを見られない人がTwitterだけを読んでいると、TLが猪瀬直樹の揚げ足取りで埋め尽くされており、まるで「規制側」がダメダメな印象だったかも知れないが、実際は猪瀬直樹がほぼ完全に番組を掌握していて、反対派は言いたいことをぜんぜん言わせてもらえていなかった。反対派は明らかな準備不足で、猪瀬の穴だらけの意見にも満足に反論できないわ、こっちの意見は猪瀬に途中で遮られて最後まで言わせてもらえないわ、もうさんざんな感じ。もう一人の児ポ専門の女性はほぼ空気だったので、1対2で人数も優勢だったにもかかわらずである。
2時間枠のTV番組で厳密な話なんてできっこないのに、条例案の細部に立ち入ろうとしちゃダメだろう。規制側はそのあたりをよく理解していて、(細部をごまかしつつ)雰囲気のつかめるフリップを用意してあり、ことあるごとに「表現規制ではない」と繰り返す。予備知識のない視聴者は「ゾーニングならいいじゃん」って気分にさせられる。おまけに猪瀬は、自分に不利な方向に話が向かうと、すぐに割り込んで話題をかっさらう。あの、瞬時に雰囲気をつかんで引っ張り込む能力はすごいね。
反対派は規制側の最大の弱点である「日本は世界的に見ても性犯罪が極端に少ない国」で「性表現が豊かになるにつれて犯罪発生率が下がっている」というポイントを真っ先に指摘して、規制側の立脚点を潰すべきなのに、その話題を持ち出せたのは番組の最後の最後、出演者の締めのコメントの段階。まさかあそこで新しいフリップが出てくるとは思わなかった。手遅れだって。
反対派の2人は、きっと評論とか創作で、じっくり時間をかければいいものを書く/描くんだと思う。でもああいう場で必要なのは、そういう「持久力」じゃなくて「瞬発力」だ。条例に詳しい人よりも、臨機応変に相手の穴を突ける論客を派遣しなきゃいけないのに、そうできなかったのは、単に人材が不足しているだけとは思えないんだよなぁ。なんというか、個々の兵隊に頼るだけで、戦略がない。
反対派は二言目には「条例案を読め」というけど、そんなもの読みたがるヤツなんていないんだよ。規制側がイメージ戦略で来てるのに、のんびり啓蒙活動してる戦局じゃないだろう。こっちもイメージ戦略で対抗しなきゃ、負けちゃうよ。これは負けられない戦争じゃないのかね。
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