2008-12-09(火) [長年日記]
■ 時間封鎖〈上〉 (創元SF文庫)(ロバート・チャールズ ウィルスン)
SF好きが選ぶヒューゴー賞は、基本的に信頼しているし、今回もその期待に応えてくれた。というか、作者が去年のワールドコンで来日してたなんて知らなかったよ!(ひどいスタッフがいたものである)
突然地球が膜で覆われて、外界より1億倍(!)も遅い時間の流れに放り込まれるというファンタジーめいた設定なんだけど、おかげで太陽系の進化を一人の人間が一生のうちに体験できるというオモシロい環境ができあがる。で、それを生かしたハードSFかと思いきや、けっしてガチガチな科学話にはならなくて、ドラマの描き込みがじつに緻密ですばらしい。
古いジャズが好きな主人公の、その趣味を生かしたエピソードとか、幼馴染との長期にわたるプラトニックな恋愛とか、思わずreblogしたくなるような自然や心理の描写が盛りだくさんで、なんだかいい読書だなぁ。SF読んでてでこういう感じって久しぶりだ。楽しかった。
この話、プロット的には「ものすごく進歩した異星人が地球にやってきて導いてくれる」という典型的な『幼年期の終わり』モノなんだけど(しかもおれはこのプロットがあまりに宗教臭いので好きではない)、「進歩した異星人」のひねりが効いていて、いやな感じがぜんぜんなかった。これならOKだなぁ。続編も楽しみだ。
ところで原題の「SPIN」は(SEO的な意味で)あまり良いタイトルではないが、邦題の「時間封鎖」はいいね、検索しても被らないし……と思って試しにググってみたら、同名のエロゲばかりがひっかかるという……。なんということだ。