2008-05-17(土) [長年日記]
■ 妙なる技の乙女たち(小川 一水)
例によって半月遅れでSFマガジンを読んでいる。クラーク追悼特集。来月も引き続き特集らしいから、御三家の中でも破格の扱いだなぁ。おれにとって御三家は、ハインラインが神で、次がアシモフ。クラークは正直あんまり好きな作家ではないし、だいたい十分に長生きしたと思うので、そんなに感慨もないのだけど。
つーか、追悼文であがる作品が「幼年期の終わり」と「2001年」ばかりってどうなのよ。クラークの「超越者信仰」っぷりがもっとも色濃い、個人的には嫌いな作品なんだよなー。だから、「短編こそが面白い」という草上仁に強く同意する次第。
そんなわけで、追悼読書も斜め方向から、小川一水作品にした。クラークが想像した軌道エレベータを、クラークが住んだスリランカではなくシンガポール沖のリンガ島に建築し、しかもそれ自身はほとんどネタにしない……という、ひねくれた(?)設定のオムニバス短編集である。主人公が全員日本人(日系)女性というのはちょっと不自然だが、営業努力として目をつぶろう!(笑)
小川一水作品は、絵にしたくなる場面がすごく多いと思うんだけど、この作品集は特にそう感じた。「港のタクシー艇長」で小船が大型船の合間をすり抜けていくシーンとか、「楽園の島、売ります」の洞窟、「Lift me to the Moon」の日の出とか、映像で見てみたいねぇ。
基本的に各作品は独立していて、軌道エレベータによってリンガ島に生まれた新しい社会で生きる女性を描いているのだけれど、少しずつ関連しあい、また徐々にスケールアップしていくことで、未来を感じさせるうまい構成。最後の作品のオチはあまりにわかり易すぎるけど、それもまたヨシといったところか。