2007-09-18(火) [長年日記]
■ 渋滞学 (新潮選書)(西成 活裕)
1年前の本だけど、こないだNHKのサイエンスゼロでこのネタをやっていて面白かったので。
なんつっても渋滞が大嫌いである。バイクに乗り続けている理由のかなりの割合を「渋滞の影響をあまり受けないから」が占めていると言っても過言ではない。嫌いだからこそよく観察してしまうというのは良くあることで、例えば高速道路の自然渋滞が、前車との距離を詰めすぎた車のブレーキを原因として発生することも気づいている。もちろん原因を遡れば速度を落とした前車が悪いし、そのきっかけがゆるい上り坂やトンネルだということも、ちゃんと観察していればわかることだ。
それから人ごみが嫌い。就職するときに「下り電車で通勤できる」ことを条件に会社を回ったくらい、特に都内が嫌いだ。都内で歩いていると、いかにして自分のペースで歩けるかという脳内シミュレーションをやり続けるので、えらく疲れてしまう。
そんなわけで(?)、本書のまえがきで著者が同じように渋滞を嫌っていることが書いてあって、すごく親近感。もっとも著者はさらに先を行っていて、それを学問にしたばかりか、今では渋滞が好きになったとまで言う。おぉ、これぞ科学者のみが至れる境地!
最近は高速道路の上り坂の手前に、「速度低下注意」なんて看板が立つようになって、「おぉ、やっとわかるヤツが出てきたか」なんて感心していたんだけど、背景にはこういうきちんと学術的に渋滞を探求している人たちがいたんだねぇ。本書ではさらに、「車の渋滞」だけにとどまらず、人の渋滞(屋内火災からの避難とか)、アリの行列、ネットワークの輻輳から人体の内部まで、ありとあらゆるところで発生している「渋滞」を解き明かしたり(時にはまだ解き明かせなかったり)して、めちゃめちゃ面白い。
その解き明かし方がまた痛快で、ライフゲームでおなじみのセルオートマトンを使うんである。高速道路の渋滞が、たった一次元の単純極まりないセルオートマトンでかなり正確に再現できてしまうことの驚き。シンプルなモデルで実世界を表現できたときの喜びは、科学のエクスタシーのひとつだろう。まったく、PCの画面でグライダー飛ばして喜んでる場合じゃないよ。
このセルオートマトンを使ったモデルは、3つほど詳しく解説されているので、ちょっとプログラミングの心得がある人なら誰でも追試できそうだ。EXCELのマクロなら、ビジュアルにシミュレートもできるんじゃないだろうか。そんな気にさせる、題材の身近さと検証のシンプルさがまた、一般向けの科学書として実にいいバランス。
今年、講談社科学出版賞を受賞した本ですね。受賞パーティに行って来ましたけど、選考委員の池内了さんが「同じ専門分野の物理学での授賞がかなったので嬉しい」とおっしゃってました。ご本人は「論文以外で文章を書くのがしんどかった(素人に分かるように、ということだと思いますが)」と。
今年の講談社三賞のどれもが興味深い本ばかりなので、時間を見つけて読んでみようと思ったことでしたよ。
>高速道路の自然渋滞が、前車との距離を詰めすぎた車のブレーキを原因として発生する
その昔、「ヘタクソ一台、渋滞3キロ」というコラムを書いて物議を醸したことが。(^^;;
西成理論は、自分の意志で車間距離を40mあけることが可能なときしか、正しくないのではないですかね。車の長さを無視すれば、1kmあたり25台以上の車が集中したら、40mあけることは不可能になるのだから、いわゆる連休中の交通集中による渋滞の解消法にはならないと思います。
なので、連休中の渋滞がいかにも解消されるような番組の作り方はおかしいと思います。
↑そんなことおれに言ってどうなると思ってるんだろう……。
あ、古いネタが掘り起こされている。
きっとNHKがTVでなんかやったからかな。
http://www.nhk.or.jp/wonder/program/15/index.html
西成活裕さんという方もゲストで出ているようです。
ワタクシまだ見てません。9月24日再放送を録画せねば。
ああ、なるほど。
しかしこの「素人」さん、TVには尺があって細かい話を詰め込めないことや、そんな誰にでも想像のつくような指摘への反論がないわけないとか、わからないのだろうか。むしろこの人の情報リテラシが心配になるなぁ。
というか、1kmに25台もある状況を「渋滞」として、車間距離をあけようと主張してるのでは?