ただのにっき
2006-09-05(火) [長年日記]
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ニュートンズ・ウェイク (ハヤカワ文庫SF)(ケン マクラウド)
『シンギュラリティ・スカイ』に続いて読んだ、<特異点>後の世界を描いた「シンギュラリティ物」。流行ってんの? それとも単に、ハヤカワの戦略? とりあえず「アメリカ・オフライン」で吹いた。ユーモア感覚はいいと思う。
が、『シンギュラリティ・スカイ』と同様、<特異点>に関するイマジネーションが足らないように思うんだが。FTL航法もワームホールも、従来のSFなら<特異点>などなくても発明されたテクノロジーだろう。<特異点>を引き起こしたAIは、人知を超えた存在なのだから、登場するテクノロジも人知を超えたものであって欲しいものだ。
そういう意味で、「シンギュラリティ物」における<特異点>は、一時期流行ったナノテクSFにおける「グレイ・グー」となんら変わらない。たんなるテクノロジに見せかけた魔法の道具に過ぎないではないか。せっかくのアイデアなのにもったいない。もっと得体の知れないものを書いて欲しいよ。
なんだか、むしょうにレムを読みたくなってしまった。
それはさておき、本書中には過去のミュージシャンをデータから「復活」させて、同世代の客を集めてコンサートを開くという場面があるのだが、これを読んだ自分の反応が面白かった。
大昔の同じ曲を演奏し続けるミュージシャンと、それを飽きもせずに聞き続けるファン。永遠に同じことの繰り返し。たぶん、10代、20代の頃にこれを読んだらディストピアだと決め付けたに違いない。
でも、今だと「ひょっとして、これってある意味ユートピア?」と思う。全面肯定するわけじゃないが、許容できるようになった自分に驚いた。年をとるってこういうことか!