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ただのにっき


2014-12-01(月) [長年日記]

凍りついた空 エウロパ2113(ジェフ・カールソン/中原 尚哉)

本が好き!の献本抽選で当たった。ここのところ3冊連続で当たるという異常な当選確率で、どうせ当たるならアイマスライブのチケット当たれよと思わなくもない。

それはさておき、本書は木星の衛星エウロパで起きるファーストコンタクトの話だ。時代は約100年後。冒頭から主人公が謎の生物の群れに追い回されているというスリリングなシーンで始まり、その中で人間の人格を移植した人工知能があるとか、自己修復機能を持ったスペーススーツなどのテクノロジーの進歩を伺わせてなかなかうまい。とはいえ、100年たってもそんなもんか? という気もする。そもそもエウロパに人間の科学探検隊が赴くのが100年後って、かなりがっかりな未来に思えるのは、自分が20世紀に描かれたバラ色の未来に毒されすぎているからだろうか。

面白いのは、この生物が「ひょっとすると知性があるかも?」という程度の低い知能レベルという点だ。問答無用で襲ってくるし、コミュニケーションを取れるかどうかも怪しいという状況で、探検隊はこの生物の扱いについて葛藤する。この未来ではクジラ属は(人間とコミュニケートできる)知的生命体ではないという結論が出ていることになっているが、この生命体もそれと同じかも知れないわけだ。つまり、現代の人類がクジラやイルカに対峙するときと同じ状況に置いてるわけ。

主人公は科学者らしく慎重で、知性があるという前提で行動したがるが、そうは考えないメンバーがクジラを海洋資源として扱うようにこの生物も資源として考え、バックについた地球の営利企業や国家と交渉しはじめ、さまざまな権謀術数が画策されるソーシャルな物語になっていく。主人公目線では彼らは悪だけど、客観的にはどっちが悪いという話でもないのが良いね、地球ではクジラをとりまく議論はヒステリックで非論理的なシロモノになってしまったから。

さて、本書は完結していない。それなりの結末はつくが謎はたっぷり残っているし──そもそもなんで異星の生物が地球と同じ生化学を持ってるんだ?──新たな探検のネタも提示されている。とうぜん続編があるわけで、本書が売れないとそれが翻訳されないかも知れないので、つべこべ言わずに読むべきですね(笑)。

Tags: book sf

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