ただのにっき
2020-09-30(水) [長年日記]
■ 31年勤めた富士通グループから退職した
この日記では明に所属企業を書いたことはなかったけど、仕事がらみのイベントとかでは普通に名刺を配ったりもしていたので、ご存じの方にはご存じだったと思うが、新卒で入社してからずーっと富士通の子会社に所属していた*1。
今年はその富士通でマネージャになってちょうど20年になる。20年前にはまるで世をはかなんでいるような日記を書いているけど、けっきょくそのまま居座ってマネジメント畑を耕していた。20年のキャリアつったら、普通に考えてもプロ中のプロですよ。ずっとエンジニアのつもりだったのに、気がついたらマネジメントのプロフェッショナルになっていたという。人生なにがあるかわかったもんじゃないね。
富士通に限らず、日本の多くの伝統的な企業には役職離任という制度があって、定年より前に一定の年齢に達すると管理職を解かれて一般社員相当の身分になる。制度そのものには(少なくとも企業側には)一定の合理性があるとはいえ、20年間も部下を持ってマネジメントをやってきて、能力が落ちたわけでもないのにある日突然宙ぶらりんなポジションにされてしまうのも納得がいかないので辞めることにしたのだ。まぁ会社としてもそういう行動を期待しての制度運営っぽいのでwin-winだ。
タイミング的には昨年末から、リファラル狙いでのんびり転職活動を始めたものの、そもそもマネージャ職の求人というのはそんなにない(当たり前だがエンジニアの数分の一以下)。なかなかマッチする会社が見つからないでいる中、コロナ騒ぎで求人市場自体が細くなる。そんなこんなで当初の想定よりもだいぶ苦労したものの、ようやく素敵な会社と出会えたので、決断した。
かなりの余裕をもって上司に退職の意思を伝え、いわゆる最終出社日は今月9日だったにもかかわらず、事務方の稟議プロセスがなかなか進まなくてハラハラしたけど、退職予定日の今日になってようやくすべての書類をそろえられたので、本日をもってめでたく退職となった(はず。たぶん)。
日本のSIerというとIT業界では極めて評判が悪い職場だし、実際おれも炎上プロジェクトに放り込まれたときは最悪レベルのパワハラを受けて体を壊したりもしたけれど、そういうところは実のところ例外的で、全体としては悪くなかったかなーと思う。でなけりゃ30年以上も勤めたりしないよ。とくに最後の10数年間は裁量の幅も大きく、自分で設定した目標を自分のペースでかなり自由にやらせてもらえたので楽しかったね。部下にも恵まれたし。使えない上司は少なくなかったが(笑)、そういうのを上手く乗りこなすのも含めてマネジメントスキルだしな。
最後の仕事は研究所のリモートワーク環境整備(技術面だけでなくカルチャー面でも)で、安定して運用が回りはじめたところだったので、辞めるとしたら本当にちょうどいいタイミング。振り返ればなかなか悪くない31年間だった。お疲れさん!
以下蛇足。
大きな企業の退職プロセスを当事者として間近で眺めるチャンスはそうそうないものなので、この一か月はヒヤヒヤしつつもなかなか面白かった。
最初のイベントは上司への退職願の提出なんだけど(これをトリガーにして稟議プロセスが走り始める)、フォーマットも決められてるし、Microsoft Wordでちゃちゃっと作って、署名だけ手書きして提出したわけ。そしたら上司が「手書きじゃない退職願なんて受け取るの初めてだ」とか言うわけですよ。うん、おれもそう思う(笑)。でも、社をあげて「DX企業になる」って掲げてるときに、手書きじゃなきゃ受け取らないとか言ってちゃダメじゃないですかね、と屁理屈をこねたら納得してもらえた。持つべきものは物分かりの良い上司です。いつかDXが進んで、メール1本で退職できるようになるといいね。
その後、総務部門から書類一式が届くと聞かされていたんだけど、これが待てど暮らせど届かない。ようやく分厚い封筒が配達されてきたのがなんと退職5日前。いくらリストラ真っ最中で大混乱の間接部門だからって遅すぎる。
で、中身をみてその原因が推測できたんだけど、ようするに「60歳定年退職」をターゲットにしたプロセスしかないんだな、この会社。何年も前からX Dayがわかっている退職に向けて準備を進められるようになってるから、いきなり途中で辞める社員のスピード感に合わないのだ。なんたって「退職10日前までに処理せよ」と書かれた書類が入ってるんだもんな*2。もちろん定年前に辞める社員はおれが初めてなわけがないが、このプロセス、通常は利用者(==退職者)からフィードバックを受けるチャンスがないから、今まで改善が進まなかったんだろう。
富士通はいま、時田社長の号令で大改革が進行中だ。リモートワークを標準にしてオフィスを半減させるとか、ジョブ型雇用に移行するとか、他の伝統的国内企業とは一線を画すスピード感で変わりつつある。人材の流動性も今後一気に高まると思うので、定年を前提とした退職プロセスじゃ早晩やっていけなくなるだろう。DX企業化、手始めにここから始めてみてはどうですかね?