2016-03-10(木) [長年日記]
■ 人工知能との囲碁対決でシンギュラリティの予行練習気分になってる
Googleが開発したAlphaGoが韓国のプロ棋士イ・セドル九段と囲碁対決をして、AlphaGoが2連勝中。先手でも後手でも勝ったので、世間でははやくも「これは本物だ」という雰囲気が漂っている。
おれは囲碁は知らないので識者の意見や評価を鵜呑みにするしかないのだけど、序盤はどうみても悪手なのに、進むにつれてそれがじわじわ効いてきて、気がつくと負けてる……という状況(らしい)にはもう、ゾクゾクしてしまう。これってようするに、人間にはAlphaGoの指し手を理解できないってことだもんな。人類はついに、人間とは異質の知能を創りだしてしまったのだ。ひゃっはー!!
……もちろん、AlphaGoが単なる碁打ちマシーンにすぎなくて、AGI(汎用人工知能)どころか「知能」すら持っていないだろうということは百も承知だし、AlphaGoが進化した先にそのままAGIがあると信じるほどおめでたくはない。ただ、少なくとも「知能の片鱗をみせるけど理解不能な存在」ではあると思う。
SF読みとして、理解不能な知性といって思い出すのはやはりスタニスワフ・レムの一連のファーストコンタクトもので、あれに出てくるのは「明らかに知性を持っているのに意思疎通のできない相手」なんだよ。ね、ちょっと似てるでしょ。今回の囲碁対決は、盤上のファーストコンタクトなんだ。人類以外の知性は宇宙からやってくると思っていたけど、実際はコンピュータの中で産まれたんだな(というのもSFでは定番ネタかも知れない)。
最近はシンギュラリティの誤用が多くて「人工知能に仕事を奪われる!」みたいな矮小な話で引き合いにだされるたびにうんざりしてるんだけど、実際は人工知能が進歩しすぎて人間には理解できなくなっちゃう状況のことを指すわけで、そのほんの先触れみたいなことが今日起きたんではないかなぁ。
数十年後、人類が本物のシンギュラリティに直面したときに感じるであろう無力感、それにほんの少しだけ似た感情を今日、味わうことができたと思うのだ。多くの人にとってはこれは「恐怖」かも知れないけど、じつのところ、おれはもうワクワクしてしょうがない(笑)。あー、生きてるうちにこないかなー、シンギュラリティ。そのためだけに長生きしたい。
砂漠の惑星 (ハヤカワ文庫 SF1566)
早川書房
¥2,678
えっ、ソラリスしかKindle化されてないの? ひどいなー。