ただのにっき
2016-02-28(日) [長年日記]
■ 「The Martian (火星の人)」は原作つき映画のお手本だ
(例によって邦題の原作レイプっぷりについては何も書く気になれないので原題を使います。というか「火星の人」のなにがいけないのか……)
先に映画を観に行くつもりだったのに病気になってしまい、待てずに先に原作を読んだ上にいたく気に入って、主人公に感情移入しまくりな状態で実写映画を観に行く……という、典型的な「腹を立てて帰ってくる」パターンですねこれは!(笑)
……と思っていたのにぜんぜんそんなことなくて、大満足でしたよ。いやー、いい映画だこれは。というか、小説を映画化するにあたってのお手本のような作品だった。映像化ってこういうことを言うんだよなぁ。
もちろん、文庫本で上下巻になるような長い話を、長尺とはいえ2.5時間以下に収めるにあたって、削られたシーンは数知れず。とくに終盤は原作の設定を大幅に曲げてまでエピーソードをかなり大胆に落としている。観ていて「え、あれを削っちゃうの!?」というツッコミどころは次々と出てくるわけだけど「じゃあ代わりにどのシーンを削る?」と自問すると答えは出ないわけで、それくらいギリギリまで上手く削った結果だとわかる*1。逆に大事なエピーソードはそうとう丁寧に描いていて、とくに冒頭、船長が最後までワトニーの救出を諦めずに奮闘するシーンが長々と撮られていたのは感心した。あれがあるのとないのとでは、ラストの重みが大きく変わってしまう*2。
逆に映像化ならではなのが音楽で(映像ちゃうやん)、原作では単に「船長が持ち込んだ古いディスコミュージックしかなくてひどい」という描写にすぎないところが、ちゃんと文脈に合わせたりダジャレになってる選曲がされていてかなり笑える作りになっている。「秘密のケンミンSHOW」みたい。とくに「ホットスタッフ」あたりは笑いをこらえきれなかった。原作ではワトニーが頻繁に発するFワードが映画では使えないので*3、その代わりに雰囲気を明るく保ついい演出になってた。
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¥1,796
もちろん映像も、ちゃんとその効果を考えた上で原作をアレンジしていて、たとえばじゃがいも畑は原作だともっと分散していて雑然としてるはずなんだけど、あえてハブの中に広い空間を用意して畑っぽく見せている。あれで達成感がすごく上がってた。上手い*4。あとパスファインダーのパラシュート発見から掘り起こすまでの流れ! ゾクゾクっとしたね!!
そんなわけで、原作つきでもがっかりしないちゃんとした映画って作れるんだなぁ、ということを再確認できた。原作と映画、どっちを先に読んでも / 観てもまったく問題ないのはすごい。そんなの抜きにしても最高にクールなSF映画だった。大満足。
蛇足: ミンディが想像通りのかわいいメガネっ子でたいへんよろしかった。ラストでメガネ外しちゃってたのは残念だが。あと中国側の女性が、支援決定を聞いた時の表情がすごくいい演技だった。