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ただのにっき

2016-02-20(土) [長年日記]

火星の人(アンディ ウィアー)

病気療養中は、解熱剤のおかげで平熱でもわりと延々と寝てしまうので、あまりまとまった本とか読めないんだけど、さすがに寝るにも飽きてきたので読書をすることに。せっかく休んでるんだから少しでも積読を消化しておこう。かみさんと映画を観に行く予定だったけど寝込んでいるからそれもキャンセルだし、ということで原作に手を出す。

すでに評価の定まってる傑作だし、あんまり書くことはないかなー。主人公の手記が、文中では「ログ」と書かれているように日誌の体裁なんだけど、ジョークにあふれていて感情表現豊かなのでどっちかというと「日記」のニュアンスが強いのが面白みなんだよな。ときどき読者のことを意識して「ですます」調で言い訳じみたことを書くあたり「Web日記」ぽさすらある*1。宇宙飛行士が主人公のSFでこういうスタイルのものは、わりと日誌的に淡々と書かれることが多い印象なんだけど、そうじゃないのがこの作品を傑作たらしめている気がする。

あと面白いなぁと思ったのが、ソフトウェアの活躍するシーンがかなり多いこと。この手のSFでこの傾向はかなり現代的な良い描写だと思う。本作では活躍の場面はなかったけど、実際スピリットのときにはプログラマが仕込んだバックドアによってプロジェクトが継続できたなんて事例もあるわけで、本作にあるようなパスファインダーやローバーのハッキングによるファーム書き換えにはかなりリアリティがある。

もとはWeb小説であまり先のことを考えずに書かれたということだけど、ここまで次から次へとトラブルを発生させつつ、ちゃんと回収しながらハッピーエンドに持っていくストーリーテリング能力の高さには舌を巻く。他の作品も読んでみたいものだ。

Tags: book

*1 これは翻訳が上手いのかも知れない。