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ただのにっき

2014-01-16(木) [長年日記]

天獄と地国 (ハヤカワ文庫JA)(泰三, 小林)

先日「サカサマのパテマ」を観て、本書を思い出したので積読から発掘。SFマガジンに掲載されていたところは読んでいたけど、通して読むのは初めて。で、まさか完結してないとは思わなかった。せいいっぱい好意的に「読者の想像に委ねた結末」と解釈できなくもないけど、普通これは「投げっぱなし」というんじゃないの。ひどいよなぁ。

舞台は「リングワールド」のパチもんで、面白いのはリングの内側じゃなくて外側になぜか人が住んでいるという設定。頭上が地面で、気を緩めると空に"落下"してしまうという設定、これはもう、面白くないわけがない。もちろん小林泰三のやることなので、物理計算に手抜きはない。乏しい資源を奪い合って暮らす絶滅寸前の人類が、謎の古代兵器==巨大ロボットを発掘して、存在するかどうかもわからない「地国」を目指す旅を始めるというストーリーもいい。

でもいいのはここまで。あいかわらずグロい描写が多いけど慣れちゃったし(強い刺激には慣れるのも早い)、こんなにカツカツの生活してる主人公たちが妙に物理学に詳しかったりする奇妙さには始終違和感を覚えた*1。資源不足で汲々してるわりに、話の中では平然と半年とか1年の時間が飛んでしまったりして、切迫感がない。広大すぎる世界を設定してしまったがゆえに時間や距離の尺度が人間の生活とマッチしなくなってしまっている。ようするに世界設定が面白いだけで、物語として説得力がないのよね。

えっ、これ星雲賞とってるの!? へぇ……いや……ふーん……。ところでこの表紙、宇宙船の上下が逆じゃないのかな。彼らは頭を地面に向けて生活してるんだと思ってた。

Tags: book

*1 おかしな物理学に支配された世界で生き抜くには必要な知識だ……と、これも最大限好意的に解釈できなくもないけど。