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ただのにっき

2013-01-12(土) [長年日記]

リヴァイアサン クジラと蒸気機関 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)(スコット・ウエスターフェルド)

1年以上前の本ですが(現在、電子積読82冊)。終盤、いいところで物語がバツっと切れて「えっ」となった。三部作の1冊目だそうだ。知らずに買ったおれも悪いが、せめてサブタイトルに「××シリーズ[1]」とか「○○三部作」とか入れといてくれ……。自炊するようになってから裏表紙のあらすじとか読まなくなっちゃったもんなー。ただ、ちょうど先月に最終巻まで翻訳が揃ったようなので、残りもとっとと買うべきだ。

さて気を取り直して。

いやー、いいジュブナイルを読んだ。世のお父さんお母さんはぜひこれをお子さんに読ませてですね、ゆくゆくは立派なSF者にしたててもらいたい(笑)。

最初は「ふーん、スチームパンクか、さすがにそろそろ飽きたな」とか思って読み始めたんだけど、実際は蒸気機関よりは少し時代が下って第一次対戦勃発のころ。イギリスはダーウィンが遺伝子操作技術を開発して一大バイオテクノロジー国家になっており、対するドイツは内燃機関を発達させて多足歩行機で軍を構成している*1。もちろんどちらも「ありえないほど」に進歩しすぎているのでここがファンタジーなわけだけど、それでもクジラの遺伝子から作られた生きた巨大飛行船 vs 地上を八本の脚で移動する弩級戦艦なんてものを見せられたらなんでも許しちゃう気になろうというものだ。とくに飛行船の方はさまざまな遺伝子改変動物たちが独自の生態系を形成していたりして、なかなか面白い&キモくて良い。

これに、育ちも身分も違う主人公の少年少女によるボーイミーツガールがあって、それが実にじれったい進展ぶりで……とジュブナイルの王道もしっかり押さえている。ふたりの違いを際立たせる言葉づかいを選ぶ翻訳もいい感じだ。「イラスト」と呼ぶのもはばかられる挿絵もタッチがちょっとレトロな感じで、雰囲気をもりあげる。これは3冊まとめて買って一気に読むべきだったなー。

リヴァイアサン クジラと蒸気機関 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
スコット・ウエスターフェルド
早川書房
¥1,760

ベヒモス―クラーケンと潜水艦 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
スコット ウエスターフェルド
早川書房
¥1,760

ゴリアテ ―ロリスと電磁兵器― (新ハヤカワ・SF・シリーズ)
ウエスターフェルド,スコット
早川書房
¥1,870

Tags: book

*1 ここで当然「ドイツの科学力は世界一ィィィ」を思い浮かべる。ちなみに副題にある「蒸気機関」はこの世界ではすでに時代遅れな技術なので(ケロシンを使う内燃機関が使われているようだ)、ちょっとそれはないんじゃないのという感じである。