2012-08-09(木) [長年日記]
■ たのしい開発 スタートアップRuby(大場 寧子)
先日、電子献本していただいたもの。あいかわらず読むのが遅い。
昨今のRuby関連書籍はずいぶん豊穣なものだから、こんなアプローチの本が出せるようになったんだなぁ。面白い。Ruby/Railsそのものというよりは、Rubyコミュニティと、コミュニティが持っている「良い習慣」に関する本なのだ。Rubyによる開発が"楽しい"のは、言語の持つ性質ゆえにとどまらなくて、楽しい開発をするための良い習慣と、それを維持・推進するコミュニティがバックボーンにあるからなんだよ、という話が、実際にその楽しい開発を体験中の著者たちによって等身大の言葉で語られる。
よくRubyコミュニティに対して「キモイ」とか「電波」とか指摘される部分を、大胆に前面に押し出した勇気がすごいよね。
ただ、読み終えて、さてこれを誰に勧めよう……と考えたときに、困ってしまった。最初に思い浮かぶのは、SIerでJavaかなんかでがんじがらめの楽しくないプログラミングに辟易している人たちだ。でも、彼らはさすがにオブジェクト指向くらいは知ってるし、本書に書かれた言語のチュートリアルはさすがに初歩的すぎてつまらないと思う(そういう向きに読ませたいのはyugui本だ)。かといって、scaffoldをざっと動かしたレベルのRails解説は表面的すぎて面白みがわからない。というか、この本を手に取るくらい意識が高い人ならこれくらい知っていて当然じゃなかろうか。
と思い、「はじめに」にもどって対象読者をみなおしてみたんだけど:
- Ruby について基本的な知識を得たいという方
- 職場にRuby を導入することを目指していて周囲を説得する方法を探している方
- Ruby を使っていても今一歩うまく行かないという悩みを抱えている方
- 実際にRuby を使う予定はなくともRuby 界隈で支持されている開発手法や習慣、あるいはコミュニティ活動に興味があるといった方
いやこれ、欲張りすぎでしょう。この4種類の人たち、抱えてる課題はぜんぶ違うんじゃないか。それをいっぺんに解決する本は、少なくともこの厚さでは書けないと思う*1。実際、巻末の文献紹介は多すぎないが十分な網羅性があって、しかもただのリストでなく長めの解説がついているので本書の次の一歩を指し示すにはとても良い。これらの本に対する入り口のしての機能を狙ったのかも知れないけど……。
というわけで、対象をぐっと絞ってみたらもっと良かったのになぁと思う。たとえば上のリストでいえば最後の人たちだけをターゲットに、「Rubyistの秘密」に迫ったもっと濃い本にしたらかなりいいんじゃないか。あ、でも最終章の@ayuminインタビューはいろんな意味で面白いので、これは一読の価値あり*2
↓はAmazonだけど、もちろん電子書籍の方がオススメである(ちょっと安いし)。
表紙を見た時、Rubyってドーナツ屋さんかと思ったわw