ただのにっき
2011-08-27(土) [長年日記]
■ 「続きは紙で!」にはどんな勝算があるのだろうか
パピレスがやっている電子貸本Renta!というサービスがあって*1、夏休みということで一部のコミックのレンタル料が無料というサービスをやっていた(8/22で終了)。ラインナップを見てみると、石黒正数の「それでも町は廻っている」1~6巻があったので読んでみたのだった。石黒正数は絵柄も好きだし(かわいいけど萌え系ではないという方向)、SF系の面白おかしい短編はいくつかか読んでいたのだけど、出世作である「それ町」は、知ったときにはすでに何巻も出ていたので、一気買いするだけの思い切りがつかずにいたのだ。これはチャンス。
Renta!のビューアはFlashで、24インチモニタで最大化しても画質はたいして悪くないし、レスポンスもいいので、コミックをざーっと読むなら十分な感じ。小説はKindle以外で読む気にはならないけど、短時間で読めるコミックでこのレスポンスならなんとか許容範囲*2。
で(やっと本題)、6巻まで読んでかなり気に入ったので続きが読みたい。どうせこの無料サービス、続きを買うなり有償で借りるなりしてもらうための撒き餌だろうと思ったので続く7、8巻を探してみるも、ないわけですよ。Renta!の貸本ラインナップにもないし、親玉である電子書店パピレスにもない。なんだこりゃ、「続きは紙で」ってこと? いやいや、(1~6巻抜きで)7巻以降だけ本棚に並べるとかありえないっしょ。
コミックの電子書籍版は1巻分遅く出るという話は聞いたことがあるけど、2巻分(もうすぐ3巻分になる)も遅延してるとなると「どんだけやる気ないんだよ」と思う。が、ここは「わざとやってる」(もちろんわざと以外にないと思うが)という前提で誰が得するのか考えてみたい。
- 作者
- もし印税率が同じなら、(たいてい)価格の高い紙が売れたほうが収入は増える*3。
- 出版社
- とくに得しない……かな? ↓との関係は損ねずに済むので仁義を重んじるなら得。
- 中間業者
- 印刷会社や流通業者は電子書籍が売れてもなんの儲けにもならないが、紙ならお仕事がなくならずに済む。
- 書店
- 紙しか売らないなら言うまでもない。
- 読者
- 選択肢は多いほうがいいので、少なくとも得はしない。
えーと、つまり読者以外は多かれ少なかれ得をするのかな? おー、これはアレだ、音楽業界がCCCDとかでやったのとまったく同じ構造ではないか。なるほどなるほど、じゃあ未来も同じかもね!
少なくともここに一人、「電子版がないならいらねーや、機会があったらマンキツで読もう」と考えた読者がいたことは記しておこう。電子版さえあれば、たとえ紙と同じ価格でも買ったのになぁ。残念でしたー。