2011-07-13(水) [長年日記]
■ Being Geek ―ギークであり続けるためのキャリア戦略(Michael Lopp)
オライリー・ジャパンの高さんから献本(兼誕生日プレゼント)をいただいた。いつもありがとうございます。
タイトルから、ギークがギークであるがままに生きるためのノウハウ集的なものかと想像していたんだけど、ちょっと違った。たぶんそういう向きには先日話題になったエンジニアtypeの「脱・リーマンエンジニアに必要な4つの習慣」みたいな記事の方が参考になると思う。この人たちはちょっと突き抜けちゃってる気もするけど。
本書がターゲットにしているのは、もうちょっとリーマンエンジニア寄りなギーク。自分をとりまく人々がどんなことを考えているのか、彼らと上手に付き合って、会社生活にうまく馴染むにはどうしたらいいかという、処世術的な話題が多い。元がブログの文章ということもあって、良くも悪くもブログ本的な面がある。良い面は著者の個人的な体験をベースにちゃんと自身の言葉で書かれていること。悪い面はターゲットが(想像以上に)多様なこと。なにしろギークの家族に向けたメッセージまである。頭から尻尾までギークに向けて書かれていると期待するとちょっと肩透かしかも知れない。
それよりもむしろ、ギークたちを束ねなければならないマネージャに向けて書かれた文章が多い。著者自身もエンジニア上がりのマネージャだし。というわけで、会社ではプレイング・マネージャ、かつチーム内では誰よりもギークな自分にとっては、むしろ「おれが読まねば誰が読む」的な本かも知れない。キャリアパスの向こうに「マネージャ」が見え隠れしているエンジニアはまさに本書の主要ターゲットと言えるだろう。
中でもいいなと思ったのは、上司を類型化して対応方法を考える章。ちょっとまともな社員教育をやってる会社なら、必ずマネージャ向けに「部下を類型化して対応方法を学ぶ」といった研修があると思うが、逆に上司を類型化する一般社員向けの研修は聞いたことがない。でもこれって必要だよね。「人を類型化するなんていけない」と綺麗ごとを並べるんじゃなくて、法則がなければ上手に動けないギークたちのために「ほら、パターンがみえれば対処できるでしょ?」という例示をするのは悪くない手法だ。
とにかく話題はかなりバリエーションに富んでいるし、日米の文化の違いを楽しめることもあり、随所に面白いところのある本だった。あと、@naoyaの「日本語版まえがき」がピリッと短くてイイね(長ったらしいまえがきや謝辞が大嫌いなので)。