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ただのにっき

2011-05-18(水) [長年日記]

XMDF形式の電子書籍を「自炊」してみた

なんでこんなことをする気になったのかという話は後半に書くとして、SpaceTownブックスなどで販売されているXMDF形式の電子書籍をKindleで読めるようにしてみた。いわば「電子書籍の自炊」である。お惣菜を買ってきて、ひと手間加えるみたいな?

似たようなことを考える人は当然いるわけで、手法的にはXMDF形式の電子書籍を無理やり変換してkindleで読むに書かれているとおり。UWSCのスクリプトは少しパラメタをいじってこんな感じ:

dir = "PATH_TO_IMAGE_FOLDER" //保存フォルダ
page = 2000 //ページ数
wait = 0.2 //ウェイトタイム 0.2sec

while True
   ifb GETKEYSTATE(VK_UP)
      for count = 1 to page
         id = GETID(GET_ACTIVE_WIN)
         SAVEIMG(dir+"/"+REPLACE(FORMAT(count, 4), " ", "0"), id, , , , , 1, 100)
         KBD(VK_LEFT)
         Sleep(wait)
      next
   endif
   Sleep(0.2)
wend

XMDFをWindowsで読むためのブンコビューアは、ウィンドウ幅を最小に、ウィンドウ高をできるだけ大きくとった上で、こんな感じの設定。このへんは使用しているディスプレイによって違ってくる:

  • フォント: LC明朝、28ポイント(Bold)
  • 文字間: 小
  • 行間: 小
  • 余白: なし

UWSCを走らせると、800枚超のjpgファイルができるので、それをjpgディレクトリの下に入れて、下記のスクリプトを(こんどはLinuxで)走らせれば、Kindle上でdot by dotなPDFファイル「out.pdf」ができる。-cropパラメタの値は削りたい余白に合わせて調整する:

#!/bin/sh                                                                                                 
for dir in png pdf; do
   if [ ! -d $dir ]; then mkdir $dir; fi
done

for jpg in jpg/*; do
   png=`echo $jpg|sed 's/jpg/png/g'`
   pdf=`echo $jpg|sed 's/jpg/pdf/g'`
   convert $jpg -chop 60x60 -gravity SouthEast -chop 15x60 -gravity NorthWest -resize 560 $png
   sam2p -j:quiet $png $pdf
done
pdftk pdf/* cat output out.pdf

Kindleに送るとこんな感じ。紙の文庫本を自炊したものより、字が大きめで読みやすい:

ただ、ちょっとフォントが美しくないんだよなぁ。明朝の横画の太さがまちまちで、例えば「日」の字なんて中央の横線だけ妙に太かったりするので、これはブンコビューアのレンダリングエンジンがショボいのだと思う。フォントを入れ替えれば多少はいいかと思い、青キン明朝に変えてみたら「っ」のような小さい字の表示位置がぶっ飛んでしまったのでボツ。シャープさん、もうちょっとClearTypeの研究をしてくらはい。


さて、なんでこんなことをしているかというと、Twitterで風穴さん(@windhole)と「どんな電子書籍なら買う気になるか」という話をしていたのよ。おれは「20年後にもちゃんと読める」という条件を掲げて、端末依存やアプリ依存、非公開フォーマットの電子書籍は買いたくないという話をしたんだが、風穴さんは「制限なしXMDF」は消極的に許容しているという。

XMDFは最近、制作ツールを無償公開するなど、オープン化に一歩踏み出しているものの、(おれの予想では)数年以内にEPUB3に負けると思う。おそらくXMDF→EPUB3変換ツールの登場は時間の問題だろう。それなら今からDRMのかかっていないXMDFなら買っておいてもいいかもね。

だいたい、縦書の書籍では選択肢がほとんどないわけで、紙の本を買ってバラしてスキャンするのに対して、XMDFをビューアごとキャプチャして画像PDFにまとめるのでは、手間も金額も段違いに少ない。おまけにゴミも出ないから環境にも優しい。なんだ、紙の本を買うんだと思えば、躊躇する必要なんてなかったんだ。

というわけで、試しに「プリンセス・トヨトミ」を買ってみたわけだ。普段はけっして買わないベストセラーだけど、他に読みたいのがなかったので。

https://www.amazon.co.jp/dp/9784167788025

これで買える電子書籍の幅が広がって「よかったよかった」ということになればいいのだが、試しにSF棚を見て「おっ、ハヤカワ文庫があるじゃん」と思ってリストアップしてみるとほとんど全部が「グイン・サーガ」だったりして、はっきりいってお話にならない。早川・創元という日本のSF二大レーベルが一番電子書籍に及び腰ってのはどうなんだよ、え?

Tags: ebook kindle