ただのにっき
2010-12-14(火) [長年日記]
■ https://www.amazon.co.jp/dp/9784274068317
いやー、思った以上にアグレッシブな本だった。
前半は「電子書籍の歴史をおさらい」みたいな感じで、まぁ、この業界に少しでも興味があればだいたい知ってる話がうまくまとめられていて、「まぁこんなもんかな」と思いながら読み進めていたら、後半はうってかわってぐっと「技術寄り」の話になる。それも電子リーダーとか配信に関する技術話ではなくて、1ソース・マルチユースな書籍を作るためのソフトウェア的な技術の話である。
で、本書に登場するのがおなじみ@kmutoや@takahashimで、出てくる用語も「ReVIEW」とか「GitHub」なわけで、たぶん紙の出版社の人が読んでもほとんどチンプンカンプンなんじゃなかろうか。ただし、ここに書かれているような「著者にも扱える中間フォーマット」とか「著者にもバージョン管理システムを使わせる」なんて話は動きが速くて先行き不透明な現在の電子書籍業界で「生き残る」(まさに本書のテーマはこれ)ためには必須の話だ。だから、Pragmatic Bookshelfや達人出版会の例を持ち出すまでもなく「本好きの技術者」がやる出版社には未来があると思う*1。
そんなわけで、ちょっと毛色が違うけれど、ちゃんと現実的な未来を見すえた「電子書籍に関する書籍」としてかなりいいセンいってると思う。噂によれば著者はオーム社にの中の人らしいので、自前でeStoreを運営したりする*2のはそういう思想の現れなのかも知れない。
ちなみにおれは本書をeStoreで購入してPDFで読んだわけだけど、紙と同じデザインの紙面なので、当然ながらKindle3では読めなかった。わざわざ画像化して余白を削除したももの、それでも相当字は小さかった。やたらと面積と取っている脚注部分だけカットすればずいぶん読みやすくなったのだけど、コラムやインタビューにはその余白すらないし。
本書でさんざん述べられているように単一のソースから複数のフォーマットが生成できるのがこれからの電子書籍なのであれば、eStoreでもPDFだけでなくePUBやmobiでもダウンロードできるようにして欲しかった*3。少なくとも紙とまったく同じレイアウトで出すというのは、ちょっと工夫がなさすぎるんじゃないの、と思う。
なお、Amazonから(紙バージョンを)買うなら上の書影をクリック。電子版をオーム社から直接購入するなら下記から:
Ohmsha eBook Store is no longer available.