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ただのにっき


2010-02-14(日) [長年日記]

ウェブアプリケーションのためのユニバーサルデザイン(Wendy Chisholm)

最近は仕事でWebアクセシビリティなんてものにまで首を突っ込んでまして……何屋なんだ、まったく。休暇中に関連書籍を読もうと思っていたのに、読めたのはこれ1冊だけだよ。この遅読っぷりはなんとかしないと……。

さて、日本のWebアクセシビリティ標準である(おそらく年内に改訂版が公開される)JIS X 8341-3は、本書で扱っているデファクトスタンダードWCAG 2.0と互換性があるので、日本で現在Webに関わっている人はすべて本書の対象読者になる。

書名が「アクセシビリティ」じゃなくて「ユニバーサルデザイン」ってところがまずいいねぇ。WCAG読んでるとわかるけど、アクセシビリティってちょっと狭いんだよね。高齢者や視覚障害者だけじゃなくて、メモリや通信帯域がキツい端末の利用者なんかも視野に入れると、やっぱりユニバーサルデザイン(UD)という視点が必要になってくる。そういう前提をきちっと冒頭で解説しているところがいい*1

さらに対象が「ウェブアプリケーション」という点。多くのWebサイトが固定されたものではなくなっている現在、Web制作者は(たとえAjaxやFlashをバリバリに使っていなくても)自分が「Webアプリケーション」を作っているという認識を持つべきだ。そういう時にどんなところに気を配らなくてはならないかが、実例とともに解説されている。「CSSだけでクールなドロップダウンメニューを実装したぜ!」なんて鼻息を荒くしてる技術者がいたら、ちょっと立ち止まってそれが「アクセシブル」かどうかちゃんと調べてみた方がいい。

後半、WAI-ARIAの領域に踏み込み始めると、JavaScriptのコードが何ページにもわたって登場するなど、ちょっとハードル高めな部分もあるけど、周辺技術の概略を把握するには記述範囲も分量もちょうどいい感じ。これより深い文献はもう各種規格しかないので。

ウェブアプリケーションのためのユニバーサルデザイン
Wendy Chisholm
オライリージャパン
¥453

Tags: book a11y

*1 そういう意味で付録B(日本国内での状況)の前半は蛇足だと思う。障害者が何人いようが確保すべきなのがUDであるというのが本書のスタンスではないのか?


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