ただのにっき
2009-09-04(金) [長年日記]
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ベガーズ・イン・スペイン (ハヤカワ文庫SF)(ナンシー クレス)
昨年からハヤカワが大プッシュしているナンシー・クレスの中短編集(を半年遅れで読んでいる)。もともと短編が得意な人だそうで、紹介済みの「プロバビリティ」シリーズのように途中でテンポが落ちることもなく、主題も焦点が合っていて佳作ぞろい。これはいい短編集だ。
表題作とそれに続く「眠る犬」は、眠らなずに済むような遺伝子操作を加えた人々の話で、いわゆる「迫害される新人類」のバリエーションなんだけど、他人同士のいさかいではなく親子や姉妹を扱うことで、感情移入しづらい題材をかなり「身近」に感じさせることに成功している。
それからなんといっても「ケイシーの帝国」! この胸を締め付けられるような読後感は、SFやファンタジーに親しんできた者にしかわからんだろうなぁ。ケイシーの気持ちを「体験してみないかぎり、ぜったいにわからない」と繰り返し強調するあたりがニヤリ。
早川書房
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