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ただのにっき

2008-10-17(金) [長年日記]

バリントン・J・ベイリー死去

向井さんのところでベイリーの訃報を知り、また一人、大好きな作家が亡くなって悲しかった。もっともベイリーはもう15年も日本での紹介が途絶えていたわけで(そもそも書いてなかったようだが)、「もう新作が読めない」といったたぐいの悲しさとはちょっと違うんだが。

なんというか、ベイリー作品を読んだあとの、なんとも言えない高揚感を思い出して、15年ほど意識がタイムスリップしてしまった感じだ。ベイリー作品は一言でいうと「ばかばかしい」んだけど、かといって典型的なバカSFを読んだ後の脱力感はなくて、「ベイリーのバカ話に最後まで付き合ったぜ!」という達成感のようなものがあるんだな。不思議な作家だった。

ベイリーというとまずあげられるのが『時間衝突』だと思うが、個人的に好きだったのは『カエアンの聖衣』と『禅<ゼン・ガン>銃』。時間や宇宙をネタに大きい話を書くのは誰にでもできる。でも「スーツ」や「拳銃」という小道具をメインアイデアに据えて、ここまで話を大きくできるのはベイリーだけだろう。

ワイドスクリーン・バロックにカテゴライズされることの多かったベイリーだが、他のワイドスクリーン・バロック作家とはその「ばかばかしさ」っぷりが飛びぬけていて、特定のジャンルに入れるにはもったいない作家だったと思う。ベイリーはベイリーというジャンルだったんだよなぁ。

↓に代表作をあげておくけど、もちろんどれも絶版だ。ハヤカワはこれを期に復刊すべき!

カエアンの聖衣 (ハヤカワ文庫 SF 512)
バリントン J.ベイリー
早川書房
¥500

禅銃(ゼンガン) (ハヤカワ文庫SF ヘ 3-1) (ハヤカワ文庫 SF (579))
バリントン・J・ベイリー
早川書房
¥858

時間衝突 (創元推理文庫)
バリントン・J・ベイリー
東京創元社
¥117