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ただのにっき


2008-05-20(火) [長年日記]

ISASメールマガジンの海老沢研のエッセイがすごくイイ!!

先週配信されたメルマガで読んで、いたく感動したんだけど、やっとWebでも公開されたので紹介。

僕はユーラシア大陸の真ん中で遭難していた。非常用マニュアルに従ってGPSで地球上の位置を確認し、イリジウム携帯でオフィシャルの緊急番号を呼び出す。「ゼッケン39番、423kmを過ぎたところでミスコースしました。北緯50度09.803分、東経93度10.325分の地点で砂に埋まってスタックしています。これ以上は走行不可能です。救助を要請します。」

ゼッケン39番、救助を要請します

JAXAの(というかISASの)海老沢教授は、最近バイクでラリーに参加するようになった天文学者として一部では有名らしい(この記事読むまで知らなかった)。バイク乗りならビビビっと来るこんな出だしのエッセイが、天の川銀河の謎に迫るX線天文学の話につながるのだ。そのパースペクティブは鳥肌モンだ。叙情的な書き方だが、最先端の科学のシビアさと楽しさが存分に伝わってくる名文だ。

それにしても文才あるなぁ、この人。おれと同世代だ。一般向けの啓蒙書を書けばいいのに。

ググっていたら本人によるRally Mongolia 2008レポートを見つけたので、あとで読む。これって確か、何年か前にカブで参加した人がいたあの大会だよなぁ?

残虐行為記録保管所 (海外SFノヴェルズ)(チャールズ・ストロス)

クラークの第三法則のせいか、魔法・魔術を科学的に説明できる世界を描きたがるSF作家はあとをたたない。この作品も、多宇宙解釈と高等数学で魔術が理解され、ある程度コントロール可能になっている世界が舞台。主人公は元IT技術者(というかシステム管理者)で、官僚主義に塗り固められた(ハードボイルドではない)スパイ小説の体裁という、ようするに「ありがちな設定×ありがちな設定」な小説だ。

いや、面白かったよ、小説としては。まったく予備知識なしで買ったもんだから、長編一本だと思って読んでいたら、残りページがずいぶんある状態で結末になってしまい(もうひと盛り上がりあると思っていたのに!)、後ろに中編が一本付いていることをあとで知ったとか、そういう些細なガックリを除けば、まぁまぁ。中編の「コンクリート・ジャングル」の方がまとまりがあって面白かったかな。

でもさぁ、これを「海外SFノヴェルズ」ブランドで出す意味は? FTかNV文庫でいいじゃん。作者は魔術の背景にある理論について真面目に説明する気は毛頭ないらしいから、SF的な面白さはほとんどない。ホラーかと言われれば、ラヴクラフト用語が多用されてはいるものの、怖い場面やグロい場面もあんまりないし。海外SFノヴェルズを買うときは、がっつり濃ゆいSF成分を求めてるのに、これはないよなぁ。

あと序文! 小説の序文ほど興を削ぐものはないのに、なんでこんなもんをつけるんだろう。理解しがたい。

Tags: book

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