ただのにっき
2007-07-14(土) [長年日記]
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敵は海賊・正義の眼 (ハヤカワ文庫JA)(神林 長平)
10年ぶりの続編だそうだ。もう脇役の名前も忘れてるよなぁ……と思ったが、けっこう覚えていたので驚いた。キャラが立ってるということか。
ラテル、アプロ、ラジェンドラの3人(?)が揃っているシーンでは、相変わらずヨタが8割を占める構成。なので、たかだか300ページのうち実質的にストーリーにからむのは半分くらい、ようするに長編というよりは中編に近い。読み応えたっぷりの長編だと思って読むと、肩透かしかも。おれはけっこう気に入ったけどね。キャラクタ物って、そういうもんだし。
それはさておき、やはりこのシリーズの一番好きなところは、ラジェンドラのアジャイルっぷりである。たとえばラテルによるCDS使用命令に対して:
<了解、セットCDS。ファイア。----完全破壊を確認しました>
CDSはある意味究極の兵器なのに、いっさいの躊躇なし。もったいぶってエネルギー充填率をカウントアップとかしないし、意味なく120%まで待ったりもしない。こういう'リアル'が神林作品の魅力だ。
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驚愕の曠野―自選ホラー傑作集〈2〉 (新潮文庫)(康隆, 筒井)
以前ツッコミで勧められたので買ってみた。「ホラー傑作集」という副題を見て、ちょっと躊躇したんだけど。怖いのキライだし。
とはいえ、現代的な視点からみると、あんまりホラーっぽくはないし、怖くもない。どっちかというと「奇妙な味」でくくられるジャンルの短編がほとんどだ。SF作家が書いたホラーというと、やはり小松左京の「くだんのはは」にとどめを刺すわけで……とと、この話はやめておこう。
未読だった「メタモルフォセス群島」が読めたのは嬉しかった。オチがちょっとピリっとしないけど、面白かった。他はまぁ、それほど筒井の「天才っぷり」を感じさせる作品はなかったかなぁ。
しかし、勧められた表題作の「驚愕の曠野」はたしかに別格。構成面にはいかにも筒井らしい実験手法がみられるが、それだけではホラーにならない。冒頭に登場する語り手の「おねえさん」の存在がそこかしこに現れることに気づいてしまうと、これが一気に恐怖を引き起こす。そしてオチでズドン。これは怖い。そしてすごい。