ただのにっき
2005-12-25(日) [長年日記]
■ Ruby 1.8.4リリース
例によってなんの手伝いもできないままリリースされてしまった。リリースに携わった皆さん、お疲れ様でした。せめてpreviewでtDiaryの動作チェックくらいしようと思っていたんだけどなぁ。まぁ、例によって先っぽを突っ走るサーバでちゃんと動いているようなので、よしとしよう。
#第一はsargeなので、たぶんずーっと1.8.2のままです。
■ google_analytics.rb更新
トラッキングコードの挿入位置がheadからbodyに変更になっていたようなので、contribにあるプラグインを更新。
tDiaryでfooter_procを使うと、厳密にはbody要素の末尾には来ないんだけど、ま、たぶん影響はないだろう。つーか、おそらく従来どおりhead要素に入れておいてもほとんど変わらないと思われ。
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Joel on Sofware (Joel Spolsky / 青木 靖)
Webでも読める有名な「Joel on Software」の書籍化なんだけど、未訳の文章も収録されているそうなので、ソフトウェア関係者は必読(逆にWebにしかない文章もあるので、Web版も必読である:-)。
今回、付箋紙読書をやってみたんだけど、付箋の挟まっている部分が前半部分に集中していたのが面白いと思った。前半はJoelの実体験をベースにした実践的な話題、後半は(実体験から演繹された)他者への言及が少なくないからだろう。実践的なほうが心を打つ。もっとも、前半と後半でJoelのスタンスが大きく変わっているわけではなく、可能な限り自分自身の体験からはみ出さず、リアルであろうと心がけているように感じた。そういう意味で、非常に「誠実な」本である。
話題は多岐にわたり、いちいち言及していたら書評だけで本になってしまいかねないので、アジャイルに関する部分にだけ述べておきたい。個人的に一番「おもしれぇ」と思ったので。
Joelはどちらかというとアジャイル手法には懐疑的で、特にXPについては本書中でも(中立なふりをしつつも)批判的な書き方が目立つ。Microsoftをはじめ、パッケージ製品を開発してきた経歴からして、ある程度予想できる姿勢ではある。また、中途半端にアジャイル手法を聞きかじっている読者にとっては、「仕様書を書け」だの「スケジュールを立てろ」だのと、いささか古臭く感じる表題が並んでいる。
しかしながら、中身をじっくり読むと、じつにアジリティに溢れたことを言っているのである。パッケージ製品開発において、実際の顧客をプロジェクトに招き入れることは不可能だが、Joelの言う「プログラムマネージャ」はまさに顧客(プロキシ)に相当する作業をしている。仕様の提示がプログラムマネージャの仕事であるだけでなく、仕様の変更については(力関係ではなく)プログラムマネージャとプログラマの話し合いで決めるというところまでXP的だ。
Joelの言う「仕様書」もまた、(変更不能な聖典ではなく)必要に応じて随時書き換わる。内容もまるでストーリーカードだ。また「スケジュール」はプログラマが立てるし、時間単位で管理され、実績に応じてこれも書き換わる。他にも「デイリービルド」に「ペーパープロトタイピング」と、おなじみなものを含め、Joelが提示しているのはまったくアジャイルな手法なのだ。
ここからわかること。Joelは誰に教わるでもなく、自らアジャイル手法をあみだし、身に着けたこと。そしてMicrosoftもまた同様に、アジャイルが世に受け入れられるよりも以前から、アジャイル開発を実践していたこと。なるほど、Microsoftには、おいそれとかなわないわけだ。