ただのにっき
2005-10-04(火) [長年日記]
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ディアスポラ (ハヤカワ文庫 SF)(グレッグ・イーガン)
読んでる最中、ずーっと「試されてる」という感じが抜けず。何を試されてるかというと、理系度というか、「おまえ、本当に物理専攻だったんか」と問われているような。すみません、数学は落ちこぼれでした(大汗)。
解説で本書で一番難解なのは出だしの部分と書かれているが、大嘘である。日ごろからコンピュータに接していれば、理屈はわからなくてもイメージするのはチョロいっしょ? この、ソフトウェアが自我を確立するまでの過程の事細かな描写で、まずグイっと引き込まれる(か、人によっては投げ出すだろう)。が、そのあとに延々と続く、5次元とか6次元とか12次元とか無限次元とかの幾何学を文字だけで語るにおいては、もう、どうにもついていけん。マニアックすぎる。傑作中篇だった「ワンの絨毯」とか、ワームホールとたんぱく質の類似性とか、トランスミューターの遺物とか、個々のアイデアはメチャメチャ面白いんだけど。
そう、この本、小説としての体をなしてないんじゃないか。SFらしい壮大なストーリーはあるんだけど(終盤の猛烈なスピード感はすごい!)、イーガンはそこにはぜんぜん重きを置いていないような気がする。各章は基本的に独立していて、それぞれが長編一本分のアイデアをぶち込んだイーガンの実験室だ。読者は章が変わるたびにまったく違う舞台装置に放り込まれる。小説を読んでいるというよりは、ゲームをプレイしているという感覚が近い。
というわけで、「SFやっててよかったよ〜」と心底思えるヨロコビはある。そういう意味では五つ星。でも、小説としてどうよという疑問はぬぐいきれないし、当然ながら、こんなに読み手を選ぶ本を、人様にオススメできるわけがない。わかったふりをして絶賛する気には(まだ)なれない。自分の責任においてのみ、手に取るべき本である。
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わはは、ウケた。スタイルシートもちゃんとadd_headerで挿入してるところとか、芸が細かい。