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ただのにっき

2003-02-25(火) [長年日記]

Ruby 10歳

1日遅れだけど。しかし、Makiさんはいい記事書くよなぁ。

それはそれとして、ruby-lang.orgのtDiaryも1.5.3にすべきなんだけど、さて、RDスタイルを改造してBlogKit対応にすると、editorたちは喜ぶかしらん?

Hiki 0.41

ここんとこ忙しかったけど、やっと時間が取れたのでCVSに追従。これでいつバージョンアップしても万全だ。

Wikiの恐怖?(2)

あれからいろいろ考えたりしているのだが。

「SN比」なんて言葉をよく使う。「2chのSN比は悪い」とか「/.でSN比を上げたかったらしきい値を2にしろ」とか。ようするにSignal(有用な情報)とNoise(無用な情報・荒らし)の比率である。

初めてWikiの概念を教わると、たいていの人はSN比が悪そうだという想像をする。一番多いのは消されたらどうするんだ、という心配だ。もっともである。そして、そういう不安は多くの場合、防衛的な方向に働くので、必然的にNoiseを減らそう……という考えをもたらす。ようするに荒らしようがない仕組みにするわけだ。おれもそうだったので、kitajのところで運営されていたtDiaryの旧FAQに認証をかけることに何の疑問も感じなかった。

ところが、興味を持ちはじめて各地のオープンなWikiを訪ねてみると、想像したよりNoiseが少ないことに気づく。それも、流行っているサイトほどNoiseが少ない。これはどういうことかと考えると、Noiseを下げるのではなく、Signalを上げているのだとわかってきた。SN比はその名のとおり比率だから、Noiseを下げるだけでなく、Signalを上げることでも改善することができるわけだ。

書き込める人を制限する、つまりNoiseを増やさない防衛的な方向に進むと、Signalも増えないからダイナミックレンジが狭い。ようするに、ダイナミズムに欠けた面白くないサイトになる。一方、Noiseは気にせずにSignalを増やそうとすると、ダイナミックレンジが広がって面白くなり、さらなるSignalの流入をもたらすので、またもやSN比が向上する好循環になる。

しかも(ここが重要)、Signalの大きなWikiでは、なぜかNoiseも減るんだよ。おそらく、監視の目が多いことに起因しているんじゃないかと思うのだが。つまり、自分の入れたNoiseがすぐさまかき消されてしまうことがわかっていたら、荒らす方は面白くないわけ。きれいな街には、それ自体に犯罪抑止力があるというのに似ている。

誰かの日記で「Wikiは既存のコミュニティ向きか」と言ったつぶやきを読んだ記憶があるんだけど、それはある程度正しい。すでにコミュニティが存在している場合、最初からSignalが大きくなる素養があるからだ。tDiary-usersはいい例である。一方、たいした目的もなく個人で立ち上げたWikiは、たいていの場合は寂れている(うちのことか)。ネタがなければSignalの増えようがないからである。

これはもうシステムの実装云々の話じゃなくて、運営体制の話だ。もちろん、Noiseに対抗する仕組みをシステムが提供していればそれに越したことはないが、そんなことよりも、多くの目を集め、つねにSignalを大きく保ち続けようというモチベーションこそが、Wikiサイトを健全で面白いものに保つ最大の秘訣だと思う。

ま、なーんて話はほとんど『Wiki Way』に言葉を変えて載っているんだけどね。Wikiに疑問を持ったら、まずはこの本を読んでみることを薦める。普通の人が思いつくようなトラブルはたいていすでに載っていて、それに対する解釈や対応策もちゃんと出てるんだから。先人たちはバカではないってことよ。