ただのにっき
2003-01-19(日) [長年日記]
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トリガー〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)(クラーク,アーサー・C.)
こないだ最新作を読んでいたのでバックログは解消したと思われたかも知れないが(誰が思うんだ)、まだ1年遅れ状態は続いているのである。ときどき地殻変動があるだけ。
で、あまりクラークは読まないことにしているんだけど、最近は合作という卑怯な技(ぉぃ)を使ってくるので、どうしても本棚に入ってしまうんだな。
近づく火薬をすべて爆発させてしまう究極の防衛兵器であるこの「トリガー」の出現によって、もっとも影響を受ける社会はアメリカにあるはずで、ほとんどそのアメリカのみを舞台にして描かれているのはわからなくはない。しかし、クラークならもう少し広い舞台で展開して欲しかった。例えば日本では、トリガーを導入する家庭はほとんどないだろう。イスラム圏での反応はどうだろう。……そんな想像を広げたくなるくらい、トリガーという小道具は魅力的ということなのだが。
あと、9.11以前に書かれたこの物語が、9.11後、アメリカがまさに過剰な火力で他国を脅かしているこの時期に書き直されたらどうなるだろうか。そんなことを想像するのも面白い。そういう意味で、このSFは思弁小説という意味でのSFだ。
残念なところをあげるとすれば、やはり(クラークらしく?)やや楽観的すぎるところだろうか。まぁ、結末でドキっとするオチがついているので、それで相殺されている感はあるが。あと、苦悩する主人公はわりといい。