2008-01-31(木) [長年日記]
■ この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)(こうの 史代)
こうの史代とあらば無条件に買うわけだが、連載では読まないので単行本で初めて通して読んだ。連載開始にあたって「戦時中、広島から呉に嫁いだ女性の話」という情報だけ耳に入っていて、「なんかいかにも『夕凪の街 桜の国』の柳の下狙いっぽい企画だなー」と、警戒していた。でも、実際に作品になってみると、まったくの杞憂で、ちゃんとこうの史代作品になっていた。ほっ。
戦時中の話だというから、暗い話が多くなるのかと思いきや、連載の前日談となる短編がのっけからファンタジーなわけ。やってくれる。絵を描くのが好きな、おっちょこちょいの少女が主人公なので、この導入が実にいい。これらの短編の雰囲気は『こっこさん』に近い。
その後につづく嫁ぎ先を舞台にした連載では、家事の話は『さんさん録』で培った経験がいきているし、夫婦の話も『長い道』から感じるようなほっこり感に満ちている(あんなひどい旦那じゃないけど)。そしてもちろん、『夕凪〜』のように、戦争の暗い影がじわじわと忍び込む。
なんというか、こうの作品の集大成のようなおもむきがあるね。これは買いですよ。
この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)
双葉社
¥713
夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)
双葉社
¥880
さんさん録 (1) (ACTION COMICS)
双葉社
¥796
9784575940169
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