ただのにっき
2013-01-30(水) [長年日記]
■
時の娘 ロマンティック時間SF傑作選 (創元SF文庫)(R・F・ヤング他)
昔の文庫本は字が小さいので(これ以上視力が悪くなる前に)片づけちまおう……というわけで古いのを発掘しております。2009年発行(←そんなに古くなかった)、日本オリジナルの時間SFアンソロジー。
解説の冒頭で「『夏への扉』や『たんぽぽ娘』が人気なのは日本だけなので日本人向けにロマンチックな時間SFばかり集めた」と身も蓋もない動機が書かれていて吹いたけど、いやでもそうだよなー、どんなややこしいタイムパラドックスがくるのかと身構えてする読書は疲れるもんね。というわけで、タイムトラベルを可能にする技術的屁理屈をこねることもなく、タイムパラドックスの迷路に誘い込むこともない(あっても単純な)、ほんわかした短編がメインの、たいへん心に優しい作品集でした。
この手の作品集には欠かせないヤングやフィニイの作品はもちろん言うまでもない良作なんだけど(ヤングの作品はものすごいオールドファッションな作りなのに、時間ものならではのすばらしい結末)、他の作品もいい味わいのものばかり。やはり時間モノは結末に「おおっ」てなるのがいい。冒頭の『チャリティのことづて』もそんな感じで、時を隔てたボーイミーツガールが、実にいいのよ。
かといって画一的なわけではなく、どの作品もバリエーションに富んでいて、飽きない、良質なアンソロジー。