ただのにっき
2008-06-25(水) [長年日記]
■ 大阪日帰り
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ジャンパー 上 (ハヤカワ文庫SF ク 8-5)(スティーヴン・グールド)
こういう、ほとんど制約のないテレポーテーションを扱った話が、現代的なSFの範疇にないことは言うまでもないわけで、まぁ、ファンタジーだわな。でも面白かった。
この手の話では主人公はアホかマヌケと相場が決まっているものだが、この作品の主人公は読書好きでクレバー。だから、こんなに神懸ったテレポーテーション能力を身につけても、慎重で、ミスをほとんど犯さないし、贅沢と言ってもたかが知れてるレベル。読んでいて「おれだったらこんな馬鹿げた失敗はしない!」と憤ることもない。
アホな主人公なら、傲慢になったあげくにしっぺ返しを食らうのが常道だが、この主人公にはぜんぜん別の方向から不幸が降りかかって、それを解消するために能力を使わざるを得なくなる。説得力があるし、感情移入できる。上手い。
いちおう派手なアクションはあるものの、社会的には小さな変化をもたらすだけの結末は、実は主人公の心には大きな変化となっている。よいジュヴナイルはこうでなきゃいけねぇ。ちょっと前に映画化されたけど(もうDVDになってるのかな)、たぶん原作にあるような味わいは皆無になってるんだろうな。