ただのにっき
2007-06-13(水) [長年日記]
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軌道離脱 (ハヤカワ文庫NV)(ジョン・J. ナンス)
ほんの数年程度先の近未来。民間宇宙旅行が商業化し、抽選で当たったふつーの中年男性が、念願の宇宙へ。しかしデブリに衝突してパイロットが死亡、しかも地上との通信が途絶。たった一人軌道上に残された乗客の運命やいかに……なんて話が、なんでSF文庫じゃなくてNVから出てるのか、不思議でならなかった。もはや地球軌道上の話なんて、ハヤカワですらSF扱いしてくれないのか。
と思ったらさにあらず。絶望した乗客が、備え付けのラップトップで自叙伝を書き始めたら、なぜかそれが偶然地上に送信され、全世界の注目を集めることに。つまりこの本は、ふつーの人が突如すごい影響力を持ったアルファブロガーになる話(しかも本人に自覚なし)なんである。おぉ、普通小説ではないか。いや、それはそれで面白い。
この自叙伝というかブログが、世界に影響を及ぼしていくあたりなんて、実にありそうな展開。スケールの大きい電車男みたいな感じ。まぁ、地上とのダウンリンクだけが確立するための技術的背景は、ちょっと(かなり)無理があると思うけど。
もちろん、元パイロットで航空小説がお手の物の作者による宇宙旅行の描写は、なかなか読み応えがあって、こっち方面も楽しかった。時々、軌道上にいるのに「涙が頬を伝った」りして興ざめになることもあるが、もしかするとこれは翻訳のせいかも。