ただのにっき
2005-06-28(火) [長年日記]
■ 言及リンクのないTrackBackの何がいけないのか
昨日はなんだか、言及リンクのないTrackBackを受けまくったので、ちょっと時間もあることだし、ちゃんとまとめてみることにした。
言及リンクをしないサイト管理人は読者を大切にしていない
まず、下の図を参照して欲しい。左側のサイトAが、右のサイトBに対して言及リンクなしでTrackBackを送った状態を図にしたものである。
TrackBackは逆リンクを生成するので、「A→B」のTrackBackは、「B→A」のリンクを生成する。サイトAに言及リンクはないので、「A→B」のリンクはない。結果、サイトBの「読者」はサイトAの記事を読めるが、サイトAの読者は(関連しているはずの)サイトBの記事を読めない。
この場合、アクションを起こしたのはサイトAの管理人だけなので、管理人Aの行為がどういうことか考えてみよう。Aの行為は、サイトBの読者という「新規顧客」の呼び込みには成功しているが、「既存顧客」に対する新しいリンクの提供を怠っている。Aの読者は怒ってしかるべき、ひどい仕打ちである。
まぁ、そんな商売みたいなことを言わないまでも、このリンク関係で幸せになるのは、サイトBの読者β人だけである。もし言及リンクをしていれば、さらにサイトAの読者α人も幸せになれる。「β」だけより、「α+β」の方が良いのは言うまでもないであろう。言及リンクをしないサイトAの管理人は怠慢だし、サイトAの読者は不幸である。
これに対して、「サイトAの管理人は、サイトBを(自サイトの読者にとって)無価値と判断したからリンクはしなかったのだ」という主張がある。この点についての倫理的な問題は後述する。
ハブをハブ足りえる存在にするのは言及リンクの存在
さて、たとえ言及リンクがなくても、十分な数のTrackBackを集めたサイトは、情報のハブの役目を果たすから良いのである、という主張を見たことがある。次の図のような場合であろう。
サイトBはよほどよい記事を書いたのであろう、たくさんのサイトAnから(言及リンクのない)TrackBackを受けている。たしかに、構造的には、サイトBは「ハブ」になっている。読者がサイトBにたどり着ければ、そこからたくさんの関連記事を読むことができる。
「たどり着ければ」? そう、問題はここにある。出て行くリンクばかりで入ってくるリンクがないので、この「ハブ」のページランクは上がらない。つまり、検索サイトでひっかからないのである。検索されないサイトは存在しないも同じことだ。さらに、関連するはずのサイトAnに読者がたどり着いても、ハブへのリンクがないので、他のAnを読むこともかなわない。これでは意味がない。
もし、すべてのサイトAnが言及リンクをしていれば、サイトBへ流入するリンクは増え、ページランクが上昇、検索上位に出てくるようになって、晴れてハブの役目を果たすことになる。言及リンクがなければ、ハブはハブ足りえないのである。
言及リンクをしないTrackBackはspamと同じ
こんな主張も見受けられる。自分のサイトに来て記事を読んでもらいたいと思ったからTrackBackしたのだ。サイトBの記事に価値があるかどうかには興味がない。サイトBはTrackBackを受け付けている以上、黙って受け入れればいいのである。いやならTrackBackを受け付けなくするか、不要なTrackBackは削除すればいいではないか(たとえばここに類似の意見)。
これとよく似たロジックを見たことがないだろうか。「うちのサイトに来て商品を買って欲しいと思ったからメールしたのだ」「メールを受け付けているのだから、黙って受け取ればいいではないか」「不要なら削除してくれてかまわない」……そう、スパマーの論理(屁理屈?)である。
スパマーが悪であることに、いまどき異論を唱える人は少ないだろう。ならば、同じロジックで無差別に打ちまくられたTrackBackもまた、悪ではないだろうか。少なくともサイトB管理人に対し、有用なTrackBackかどうかを判断し、削除するという手間を要求する時点で、サイトA管理人はスパマーと同類である。
もちろん、「じゃあリンクすればいいのかよ」とばかりに、単にサイトAにBへのリンクを追加しただけでは、この屁理屈に皮が一枚加わるだけである。記事中できちんと「言及」し、密接に関連するかどうか吟味した上でTrackBackする。この過程があるかどうかで、(サイトB管理人を含む)読者にとって価値のあるリンクが生まれるかどうかが決まる。言及リンクをすることで、TrackBack先を吟味するチャンスが生まれるのだ。TrackBackには、そういう熟考の成果が含まれて欲しいものである。
単なるアクセス数アップの手段として、独りよがりの屁理屈で送りつけられるTrackBackは、TrackBackの技術的な上っ面だけを見た、底の浅い利用例である。原子力という技術を使って原爆作ったっていいじゃん……というのと同レベルだ。技術の応用にはもっと頭を使って、結果をじっくり想像してもらわないと。