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ただのにっき

2003-05-12(月) [長年日記]

Wikiページの「所有」

Wikiに書くという行為は、「自己顕示欲」と「奉仕精神」のせめぎ合いだ。

「自己顕示欲」というとあまり良いイメージを抱かないかも知れないが、フリーソフトウェア開発の原動力は実質的にコレなので、否定するわけにはいかない。Wikiに新しいページを起こして「これはおれが書いたんだ!」と主張するためのシルシをつけたくなる気持ちはとてもよくわかる。「自己主張するな」「名前を書くな」なんて言われたら、わざわざ記事を書こうなんてモチベーションはわかないかも知れない。

しかし、そうやって誕生してしまった署名入りのWikiページを修正するのは、とても心理的ハードルが高い。例えばRFIDリンク集は、当初yomoyomoさんによって起こされ、署名がされていた。その後署名は本人によって消されたようだが、あれを時系列に並べ換えるときに「あのyomoyomoさんが作ったフォーマットを変える」という行為に対して、かなり障壁の高さを感じたものである。あれは、誰が作ったか知らなければ、もっと早くに時系列順に並べ換えていたと思う。

……そして、件の小人さんの正体をみずから明らかにすることで、また別の障壁を作ってしまっているわけだ。ダメダメ(笑)。まぁ、かように「自己顕示欲」というのはコントロールしづらいものであるという実例:-)

一方「奉仕精神」と言うと、こんどは胡散臭さがただよってくる。駅前で署名や募金を求めてくる人たちが思い浮かんでしまう。

しかし、少なくともWiki上で発揮される奉仕精神は「情けは人のためならず」と同レベルで、最終的には自分のためだ。自分が持っている情報を開示することで、人から新たな情報を引き出す手段だと考えれば、胡散臭さはだいぶ和らぐ。自分が種まきや水やりに参加すれば、得られる果実がより大きくなる(しかも情報の果実は何人で分け合っても減らないのである)。これがWikiへの参加のモチベーションの最たるものだ。

しかし、どんなに立派な奉仕精神の持ち主でも、他人の家の木にまで水をやる人は少ない。オープンソースプロジェクトは実際、この手のじつに少数の人々によって支えられているのだが、歴史あるフリーソフトウェア文化と、特殊な技能を持つ人々の連帯感によって成立している(のだと思う)。だが、ちょっとした訪問者にも水やりを奨励し、ひたすら敷居を下げることを命題にするWikiの場合、ページの所有権を主張するのは致命的だ。その木が大きく育つことは稀だろう。

ということで、Wikiに何か書く時は、自己顕示欲のほとばしりをちょっと抑えて、少しばかり奉仕精神を発揮した方が、のちに手にする果実は大きくなる可能性が高い。これは一種の経済だ。値段を下げれば売れ行きが伸びるのと似たような話である。

Tags: wiki

Wikiページの「所有」(2)

上の話はもちろん、むとうさんのWebsite構築ツールとしてのWikiを読んでから書いたものである。tDiary-usersでの議論にはあえて参加しなかったけど、あそこで非常に署名にこだわるむとうさんを見て、かねがね「もったいないなぁ」と思っていたので文章化してみたわけだ。Wikiで署名をするという行為は、フィードバックのチャンスをみすみす逃しているに等しいと思うからである。

だからといって、CMSとしてWikiを使うことを否定するわけではない。ツールはツール、好きなように使えば良い。基本的に署名をしないという方針は、「誰でも書けるコラボレーションサイト」である場合には有効だが、「私個人のホームページ」にまで適用するのは行きすぎかも知れない。

十分に発達したWikiサイトの面白さは、個人としての「個」が消えてしまう一方で、サイト全体としての「個」が現れてくるところにあると思う。SF的に言えば、そのサイトがある種の集合知性を持っているかのような状態だ。コイツは更新が止まると死んでしまうので、とても危うい知性だと思う。うっかりしていると、こういう新しい知性の発現を見逃してしまうかもしれない。それは(SF者の一人として[笑])とても残念なので、おれは今日も、小人さんとして暗躍するのである。

Tags: wiki

蛇足

こういう考え方って、共産主義っぽくて受け入れられない人は少なくないだろうな。

ところで、むとうさんの記事で気になったのは「一体誰が運営しているWikiにその情報を登録するか」というところだ。コンテンツを「書く個人」から見れば、なるほど、自分の書いたものは自分のトコロに置くことで、保全をはかれるように思える。

でも「読む側」から見ると、「趣味の個人サイト」と「プロジェクトとして複数の人が運営しているサイト」では、後者にある方が安心だと思う。だって、個人サイトはその人が飽きたら、ある日突然消えてしまうかも知れない。実際、そういうサイトはたくさん見てきたし、自身でも自分のサイトがそういうハメに陥る可能性に怯える日々だ。だから、むとうさんの有用な情報は、できればこのままtDiary-usersに残っていて欲しいなぁ、と思うのだが:-)

Tags: wiki