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ただのにっき


2015-01-06(火) [長年日記]

ラブスター博士の最後の発見 (創元SF文庫)(アンドリ・S・マグナソン/片山 若子/佐田 千織)

また本が好き!の献本に当ってしまった。どういうことだ。胃腸炎がおおむね癒えてからベッドで読んだ。まぁまぁ楽しく読み終えたのだが「え、これの書評を書くの?」と我に返って少し慌てた。ネタバレ抜きで書くの、難しそう……(というか難しいので気にせず書く)。

ラブスターと名乗る人物が、生物間で行われている微細な通信の秘密を発見して全人類のあらゆる通信技術を牛耳るところから物語は始まる。文体は寓話調で、SFを読みつけている人ならラファティっぽいといえばわかるだろう。もっともラファティほど調子はずれではなく、ちゃんと筋の通った話が進む。

ラブスターはその後も、遺体をロケットで打上げで流れ星にするサービスを始めて全人類の死を手にし、さらには最適な相性を持つカップルを見つけ出す計算式を発見して愛をも手中に収める。そして次なる一手は……とまぁ、けっして尊大でも強欲でもない特定の人物があらゆるものを手に入れてしまった世界、本人の意にならないさまざまな要因で(予想どおり)この世はディストピアに向かってまっしぐら。

そんなわりと暗めなトーンになる後半の方がおもしろみがあって、けっこうクスクス笑いながら読んでしまった。神は一人しかいないから独占によってサービスが低下しているという告発とか*1、人喰いミッキーマウスとか。変容した世界のぶっ飛び方が、リアリティがまったくないのに妙に迫真でそのギャップが楽しい。

最終的にはちょっとした「ハック」でこの完璧な世界が幕を下ろすのだけど、ややあっけなさすぎるかな。寓話調でこのオチだと、説教臭すぎる感じがあるね。まぁ「おとぎ話」としてはなかなかおもしろかった。SFって紹介されてるけどSFではないよな。ファンタジー。

Tags: book

*1 この程度のことはたいしてオリジナリティなさそうだけど、これを主張するマーケッターの口調なんかも含めて面白い。


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