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ただのにっき


2011-08-22(月) [長年日記]

デカルトの密室 (新潮文庫)(瀬名 秀明)

発刊当初「傑作だ」という(一部の)評価を聞きつけて買いに行き、間違って「ハル」を読んでしまったという失態からはや6年、やっと読んだという。遅いにもほどがある。

ヒューマノイドロボットとAI(人工知能)に関する(執筆当時の)膨大な知識・考察を、表題にあるデカルトにからめながらぶち込んで、自意識とは何かを問う、ターゲットにした分野をきちんと勉強してから小説にとりくむ瀬名秀明らしい意欲作。ミステリータッチの導入から、ネットに放たれた人工知能や一般販売されるヒューマノイドロボットたちが社会を変容しはじめる中盤、そして哲学的でメタな展開をみせる終盤まで、盛りだくさんでお腹いっぱいなSFだ。

が、やっぱりおれ、瀬名秀明は合わないなぁ、と(笑)。なるほど、主題に関してはすごくよく調べてあるし、デカルトを読んだこともないおれには自意識に関する考察についてケチをつける能力もない。ただ、その他の部分がおざなりというか、フィクションとして読者に「納得」を提供できてないと思うんだよね。

例えば冒頭、チューリングテストを競い合う「チューリング・プライズ」という学術系の競技会が開かれるのだが、作品中に登場するヒューマノイドロボットはどうみてもチューリングテストをパスできるだけの能力を持っていたり。フレーム問題を(ほとんど)克服しているようなロボットが登場する未来に、チューリングテストが成立しているというアンバランス。もちろん両者は別の技術だし、それぞれの進歩があると思うが、チューリング・プライズそのものが単なるその後の展開のための装置にすぎないように見える(「逆チューリングテスト」は面白いアイデアだと思ったけど)。

他にも、「フランシーヌ・プログラム」の蔓延に対してセキュリティ面での対策がまったくされていなかったり、殺人事件までおこしたロボットという存在に対する拒否反応が存在しないなど、実社会でこういう展開はないだろうというツッコミ箇所が多数あるせいで、しらけてしまう。ストーリーの都合上リアリティは無視するというなら、そういうシグナルを読者に提供すべきだよな。「ある日突然、血の繋がらない妹がおれの部屋に転がり込んできた」的なシグナルをさ。

デカルトの密室 (新潮文庫)
瀬名 秀明
新潮社
(no price)

Tags: book

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