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ただのにっき


2008-12-19(金) [長年日記]

マザーズ・タワー (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)(吉田 親司)

うーん、正直、期待はずれというか。

Jコレから「軌道エレベータ建造の話」が出ると聞けば、「おお、これはハードエンジニアリングSFに違いない!」と思うじゃん。SFマガジンに載った冒頭部分も悪くない感じだったし。実際はエンジニアリング要素はほとんどないアクションノベルだった。JA文庫で出ていれば、過剰な期待はしなかったんだげど……。

今から40年後の近未来が舞台というわりには、現実味がぜんぜんない。まぁ、今から4、50年ほど遡ってからやり直せばこういう未来もあったかも知れないけど、現在の延長線上にある未来として、ちょっと能天気すぎるよな。

小道具はたくさん出てくるけど、どれもそのシーンを補完するためだけに思いついたようなものばかりで、社会を構成している要素としての現実感が乏しい。昔の少年雑誌に脈絡なくぶち込まれたタイプの、あり得なかった21世紀だよ、こりゃ。

ストーリーもちょっとアマチュアっぽいというか、「(登場人物が)このあと起きることを知るよしもなかった」的な説明文が随所に出てくるのが白ける。アクション小説で、後にひどいことが起きるのはみんな知ってるって。こういうのを作家が書いてきたら、編集がストップかけるべきじゃないのか?

ラノベや架空戦記で実績のある作者らしいけど、JコレからSFとして出す以上、編集者はもっと厳しく仕事してほしいと思った。21世紀にもなってこんな「SF」出してちゃだめだろう。

Tags: book

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